はじめに
2025年、ホテル業界への就職や転職を検討している皆さんにとって、今ほど追い風が吹いている時期はないかもしれません。コロナ禍を経て回復したインバウンド需要と、それに伴う深刻な人手不足が相まって、ホテル各社は優秀な人材を確保するために、これまで以上に待遇改善に力を入れています。特に注目すべきは、各社が積極的に実施している「賃上げ」の動きです。給与水準が低いというイメージを持たれがちだったホテル業界に、今、大きな変革の波が訪れています。
本記事では、ホテル業界に精通したアナリストとして、最新のニュースリリースに基づき、具体的な企業名を挙げながら、2025年の賃上げ動向とその背景、そして求職者の皆さんがこのチャンスをどのように活かすべきかについて深掘りしていきます。
賃上げの波、大手ホテルから広がる待遇改善のリアル
2025年春季労使交渉では、大手ホテルチェーンが相次いで賃上げを表明し、業界全体の待遇改善を牽引しています。これは、単なる一時的なトレンドではなく、持続的な人材確保に向けた各社の強い意志の表れと言えるでしょう。
帝国ホテル、3年連続のベースアップで賃金改善を加速
特に注目すべきは、日本のホスピタリティを象徴する存在である帝国ホテルの動きです。日本経済新聞の報道(2025年3月21日付)によると、帝国ホテルは2025年の春季労使交渉で、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせて、賃金を平均約6%引き上げると労働組合に回答しました。これは、なんと3年連続のベア実施であり、賃上げ額は平均で月額約1万6900円に上ります。全従業員約2000人が対象となるこの大規模な賃上げは、同社が従業員の働きがいと生活の安定を重視していることの明確な証拠と言えるでしょう。
帝国ホテルの賃上げに関する詳細はこちらで確認できます。
帝国ホテル6%賃上げ、3年連続ベア 東横インは7% – 日本経済新聞
また、ビジネスホテルチェーン大手の東横インも、2025年4月から約7%の賃上げを実施しており、優秀な人材確保に向けたホテル業界全体の強い危機感と、それに対応する積極的な姿勢が伺えます。このような継続的な賃上げは、ホテル業界で働くことの魅力と安定性を高める上で非常に重要な要素となります。
初任給も大幅アップ!ダイワロイネットホテルズの挑戦
賃上げの動きは、既存社員の給与水準向上に留まらず、新卒・転職者の採用においても大きな影響を与えています。その象徴的な事例が、ダイワロイネットホテルズの取り組みです。HOTERES ONLINEの2025年7月31日付の記事によると、ダイワロイネットホテルズは給与水準を改定し、年収約9%増を目指すと発表しました。
この改定で特筆すべきは、初任給の大幅な引き上げです。全国社員の初任給は31万円、地域限定社員でも27万8500円となり、これは他業界と比較しても非常に競争力のある水準と言えます。同社は、人材確保と定着を最重要課題と位置づけ、従業員が安心して長く働ける環境を整備することで、質の高いサービス提供に繋げようとしています。このような初任給の引き上げは、新卒や未経験からホテル業界を目指す求職者にとって、非常に魅力的なニュースであることは間違いありません。
ダイワロイネットホテルズの給与水準改定については、以下の記事で詳細が報じられています。
ダイワロイネットホテルズが給与水準を改定し年収約9%増を目指す、初任給は全国社員31万円・地域限定社員27万8500円に – HOTERES ONLINE
なぜ今、ホテル業界は賃上げに積極的なのか?
これらの賃上げの動きは、単なる偶然ではありません。2025年現在、ホテル業界はいくつかの大きな構造変化の中にあり、それが待遇改善を後押ししています。
インバウンド需要の回復と拡大
コロナ禍で壊滅的な打撃を受けたホテル業界ですが、水際対策の緩和と円安を背景に、インバウンド(訪日外国人観光客)需要は急速に回復し、過去最高水準を更新し続けています。これにより、ホテルの稼働率は高まり、収益性が向上。従業員の給与に還元できる余力が生まれています。
深刻な人手不足
需要が回復する一方で、ホテル業界は慢性的な人手不足に直面しています。特に、コロナ禍で離職した従業員が戻ってこない、あるいは他業界へ流出したことで、現場は深刻な人材不足に陥っています。このため、各社は優秀な人材を確保し、定着させるために、給与水準の引き上げが不可欠であると認識しているのです。給与だけでなく、働きがいのある環境を提供することも重要視されています。
ホテル業界の給料と働きがい:2025年版で後悔しない企業選びの秘訣も参考にしてください。
DX推進による業務効率化と働きやすさ改善
人手不足の解消と同時に、各ホテルはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進による業務効率化にも注力しています。チェックイン・アウトの自動化、清掃ロボットの導入、AIを活用した顧客対応などにより、従業員の業務負担を軽減し、より質の高いサービス提供や顧客対応に注力できる環境が整いつつあります。これは、給与だけでなく「働きやすさ」という側面から、ホテル業界の労働環境が改善されつつあることを示唆しています。働きやすいホワイト企業を見つけるためのヒントは、ホテル業界で本当に働きやすい会社はどこ?:現役アナリストが教えるホワイト企業の見極め方でも詳しく解説しています。
求職者にとってのチャンス:賢い企業選びのポイント
2025年現在、ホテル業界は給与水準が大きく向上している「売り手市場」の状況にあり、就職・転職を検討する皆さんにとって、大きなチャンスと言えるでしょう。しかし、単に給与が高いという情報だけで企業を選ぶのは早計です。以下のポイントを参考に、賢い企業選びを心がけましょう。
- 賃上げの継続性: 帝国ホテルのように、3年連続でベースアップを実施している企業は、持続的に従業員の待遇改善に取り組む姿勢が見られます。単年度の賃上げだけでなく、過去の実績も確認しましょう。
- 初任給の水準: ダイワロイネットホテルズのように、初任給を大幅に引き上げている企業は、新卒・未経験者への投資を惜しまない姿勢が伺えます。キャリアのスタート地点で高い給与を得られることは、その後のキャリア形成においても有利に働く可能性があります。
- 福利厚生と働きやすさ: 給与だけでなく、休暇制度、残業時間、キャリアパス、研修制度、従業員割引などの福利厚生も重要な判断材料です。DX推進による業務負担軽減や、希望休の取得しやすさなど、具体的な働きやすさ改善の取り組みにも注目しましょう。ホテル業界で後悔しない就職・転職:働きやすいホワイト企業の見つけ方も参考に、多角的に企業を評価してください。
- 地域差の考慮: 求人ボックスのデータにもあるように、ホテルスタッフの平均年収には地域差があります。特に東海地方や関東地方は全国平均よりも高い傾向にあります。自身の希望する勤務地と給与水準を照らし合わせて検討しましょう。
ホテル業界の年収動向については、ホテル業界の給料は2025年どうなる?:就職・転職者が知るべき給与動向と将来性でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
まとめ
2025年のホテル業界は、インバウンド需要の回復と人手不足を背景に、給与水準が大きく向上している「売り手市場」の状況にあります。帝国ホテルの3年連続ベアや、ダイワロイネットホテルズの初任給大幅引き上げは、その象徴的な事例であり、業界全体で待遇改善の動きが加速していることを示しています。これは、ホテル業界への就職・転職を検討する皆さんにとって、まさに絶好のチャンスです。
給与だけでなく、働きやすさやキャリアパス、企業の将来性なども総合的に判断し、ご自身の価値観に合ったホテルを見つけることが、後悔しない選択に繋がります。この変革期にあるホテル業界で、あなたの理想のキャリアを掴み取ってください。


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