はじめに
ホテル業界への就職・転職を検討されている皆さんにとって、給与や福利厚生、労働環境といった「待遇」は、企業選びにおいて最も重要な要素の一つでしょう。特に近年、ホテル業界はインバウンド需要の回復や国内旅行の活性化により活況を呈している一方で、深刻な人手不足という課題にも直面しています。
このような背景から、2025年現在、多くのホテル企業が従業員の待遇改善に積極的に乗り出しており、給与水準の引き上げや働き方改革の推進といった動きが顕著になっています。本記事では、その中でも特に注目すべき具体的な賃上げ事例として、株式会社TRUNKとダイワロイネットホテルズの最新の取り組みに焦点を当て、ホテル業界の「働きやすさ」がどのように進化しているのかを深掘りしていきます。求職者の皆さんが「働きやすいホワイト企業」を見極めるためのヒントもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
ホテル業界、給与水準向上への明確な動き
かつてホテル業界は「給与が低い」「労働時間が長い」といったイメージを持たれることも少なくありませんでした。しかし、観光需要の回復に伴う人手不足が深刻化する中で、優秀な人材の確保と定着は喫緊の課題となっています。この状況を打破するため、各ホテル企業は従業員への投資を強化し、給与水準の引き上げや福利厚生の拡充を進めているのです。
その象徴的な動きの一つが、株式会社TRUNKによる全社員の基本給ベースアップです。2025年7月より、TRUNKは全社員の基本給を一律で8%引き上げることを発表しました。通常の年次昇給率(3~5%)と合わせると、本年度の総合的な賃上げ幅は11~13%となる見込みです。
参照元:株式会社TRUNK、社員の基本給を8%ベースアップへ
TRUNKは創業以来、「ホスピタリティ業界にイノベーションを」を掲げ、業界の労働環境や給与水準の課題に真摯に向き合ってきました。年末年始の休業や四半期ごとの人事評価制度導入など、持続可能な働き方を実現するための取り組みを進めており、コロナ禍においても全社員の雇用と給与を維持・向上させてきた実績があります。今回のベースアップは、昨今の物価上昇や社会情勢を踏まえ、従業員の生活基盤をより安定させることを目的に決定されたものです。このような企業理念と具体的な行動は、求職者にとって「働きがい」と「安定」を両立できる魅力的な職場であることの証と言えるでしょう。
ダイワロイネットホテルズの先駆的な取り組み
TRUNKと同様に、従業員の待遇改善に積極的に取り組んでいるのがダイワロイネットホテルズです。同社は2025年7月31日より、給与水準を大幅に改定し、年収約9%増を目指すことを発表しました。特に注目すべきは、全国社員の初任給を31万円、地域限定社員の初任給を27万8500円に設定した点です。
参照元:ダイワロイネットホテルズが給与水準を改定し年収約9%増を目指す、初任給は全国社員31万円・地域限定社員27万8500円に
この初任給の水準は、ホテル業界全体で見てもトップクラスであり、特に新卒や若手層にとって非常に魅力的な条件と言えます。ダイワロイネットホテルズのこの決定は、単に給与を上げるだけでなく、業界全体の給与水準を引き上げる牽引役となる可能性を秘めています。高い給与水準は、従業員のモチベーション向上はもちろんのこと、優秀な人材の獲得競争において大きなアドバンテージとなります。
ダイワロイネットホテルズのような企業が示す「年収約9%増」という具体的な目標と、明確な初任給設定は、ホテル業界が「ブラック」というイメージを払拭し、魅力的なキャリアパスを提供できる業界へと変革していることを強く示唆しています。
なぜ今、ホテル業界は待遇改善に動くのか?
TRUNKやダイワロイネットホテルズの事例は、ホテル業界全体で待遇改善が進んでいることの表れです。この動きの背景には、いくつかの共通する要因があります。
人材不足の深刻化
コロナ禍からの回復により観光需要が急増している一方で、労働人口の減少や離職者の増加により、ホテル業界は深刻な人手不足に陥っています。特に、宿泊客への「おもてなし」を担う現場スタッフの確保は喫緊の課題です。このため、企業は競合他社に先駆けて魅力的な待遇を提示し、優秀な人材を惹きつける必要に迫られています。
関連記事:ホテル業界の「人材不足」はチャンス?:業界が取り組む魅力的な働き方改革と未来
従業員エンゲージメントの向上と定着
給与の引き上げは、従業員の生活基盤を安定させるだけでなく、企業へのエンゲージメント(愛着心や貢献意欲)を高める効果があります。給与だけでなく、福利厚生や働きがいのある環境を整備することで、従業員の長期的なキャリア形成を支援し、離職率の低下を目指す企業が増えています。TRUNKの年末年始休業や四半期評価制度は、まさにこの考えに基づいた取り組みと言えるでしょう。
企業価値の向上
従業員への投資は、単なるコストではなく、企業の将来的な成長を支える「人的資本投資」と捉えられています。優秀な人材が定着し、質の高いサービスを提供することで、顧客満足度が向上し、結果として企業のブランド価値や収益力が高まります。これは、持続可能な経営を実現するための重要な戦略です。
求職者が注目すべき「ホワイト企業」の兆候
ホテル業界で「働きやすいホワイト企業」を見極めるためには、給与水準だけでなく、より多角的な視点が必要です。
給与水準と昇給・昇格制度の透明性
初任給の高さはもちろん重要ですが、その後の昇給や昇格のチャンスがどれだけあるか、評価制度が明確であるかを確認しましょう。TRUNKのように定期的な人事評価制度を導入している企業は、従業員の努力が正当に評価されやすい環境と言えます。
関連記事:ホテル業界就職・転職:2024年最新!給料・福利厚生で選ぶホワイト企業
福利厚生の充実度
住宅手当、社員寮、食事補助、資格取得支援、リフレッシュ休暇など、福利厚生は企業によって多岐にわたります。自身のライフスタイルに合った制度が整っているかを確認しましょう。例えば、参照情報にある帝国ホテルは平均勤続年数が15.4年と長く、これは働きやすい環境が整っていることの一つの指標と言えるかもしれません。
関連記事:ホテル業界の給料・福利厚生:ブラック企業回避からホワイト企業選びまで完全ガイド
労働時間と休暇制度
サービス業であるホテル業界では、シフト勤務や夜勤があることも珍しくありません。しかし、過度な残業や休日出勤が常態化していないか、有給休暇の取得が奨励されているかなど、ワークライフバランスを重視する姿勢が見られる企業を選びましょう。TRUNKの年末年始休業は、業界では画期的な取り組みです。
企業の理念と文化
企業のウェブサイトや採用ページで、どのような理念を掲げ、どのような文化を大切にしているかを確認しましょう。TRUNKの「ホスピタリティ業界にイノベーションを」という言葉のように、従業員を大切にし、業界の課題解決に積極的に取り組む姿勢が見られる企業は、長期的に働きやすい可能性が高いです。
まとめ:ホテル業界の未来とキャリアの展望
2025年現在、ホテル業界は大きな変革期を迎えています。TRUNKやダイワロイネットホテルズのような企業が先陣を切って待遇改善に取り組むことで、業界全体の給与水準や労働環境は確実に向上しつつあります。これは、ホテル業界への就職・転職を考えている皆さんにとって、非常に追い風となるでしょう。
もはや「ホテル業界=ブラック」というイメージは過去のものとなりつつあり、むしろ「働きがいがあり、安定したキャリアを築ける魅力的な業界」へと進化を遂げています。企業選びの際には、単に給与の数字だけでなく、企業の理念、福利厚生、働き方改革への具体的な取り組みなど、多角的な視点を持って検討することが重要です。
待遇改善の波に乗るホテル業界で、あなたの理想のキャリアを掴むチャンスは今、大きく広がっています。


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