はじめに
ホテル業界への就職・転職を検討されている皆さん、業界の待遇や労働環境について「本当に働きやすいのか」「給料は上がるのか」といった疑問をお持ちではないでしょうか。かつては「激務」「低賃金」といったイメージが先行しがちだったホテル業界ですが、コロナ禍を経て、その状況は劇的に変化しつつあります。特に2023年以降、人手不足を背景に給与水準の引き上げが急速に進んでおり、今、ホテル業界は求職者にとって非常に魅力的な選択肢となりつつあります。
本記事では、最新の採用市場レポートや業界動向を基に、この数年で大きく改善されたホテル業界の給与水準に焦点を当て、その実態と背景を深掘りします。特に、コロナ禍からの回復期における年収のV字回復、雇用形態別の待遇変化、そして施設カテゴリごとの給与動向について詳しく解説していきます。
コロナ禍で停滞した給与水準と、その後の劇的な回復
ホテル業界は、2020年以降の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、未曾有の影響を受けました。観光客の激減と営業自粛は、雇用市場にも大きな影を落とし、特に給与水準は停滞を余儀なくされました。
ホテル求人ドットコムが発表した採用市場レポートによると、2019年までは正社員・契約社員の採用時提示年収は年平均+1.6%程度の緩やかな上昇に留まっていました。しかし、コロナ禍においては、無期雇用の正社員と有期雇用の契約社員で雇用状況に差が生じたと考えられます。多くのホテルが経営維持のため正社員の配置転換や優秀人材の確保を進める一方で、契約社員については一時的な人員整理の対象となる可能性もありました。この結果、コロナ禍の間は正社員の採用年収は微増・維持傾向でしたが、契約社員の募集は抑制され、全体の平均年収は伸び悩んだとされています。
しかし、水際措置の撤廃や国内旅行需要の回復により、状況は一変しました。2023年以降は宿泊需要が急増し、ホテル業界では深刻な人手不足が顕在化。この需要回復局面では、正社員・契約社員双方の採用が再拡大し、2023年には前年比+7%以上もの年収アップが見られました。人手不足を背景に企業が提示する待遇水準が大きく引き上がったためで、2024年もこの高い水準を継続しています。コロナ後のホテル業界では、優秀な人材確保のため無期・有期を問わず待遇改善が急速に進んだと言えるでしょう。
このように、ホテル業界の給与水準は、ここ数年で劇的なV字回復を遂げています。これは、求職者にとって大きな追い風となるでしょう。
参考元:ホテル求人ドットコム ホテル業界の採用市場レポートを発表
雇用形態別・施設カテゴリ別の年収動向
ホテル業界の給与水準は、雇用形態や働くホテルの種類によっても異なります。ここでは、それぞれの具体的な動向を見ていきましょう。
正社員と契約社員の年収推移
前述の通り、コロナ禍では正社員と契約社員で年収の推移に差が見られましたが、回復期においては双方で待遇改善が進んでいます。特に、人手不足が深刻化する中で、企業は優秀な人材を確保するため、雇用形態を問わず魅力的な条件を提示する傾向にあります。これは、契約社員としてホテル業界に飛び込み、実績を積んで正社員登用を目指す方にとっても、以前よりも有利な状況と言えるでしょう。
ホテル業界の平均年収については、以下の記事でも詳しく解説していますので、併せてご参照ください。ホテル業界で働くなら知っておきたい:職種別の平均年収を徹底解説
施設カテゴリ別の採用時給与
ホテルの種類によっても、給与水準には違いがあります。主なカテゴリごとの特徴を解説します。
ビジネスホテル
ビジネスホテルの年収水準は、シティホテルやリゾートホテルに比べて一貫して低い傾向にありました。その差は平均で年間10〜20万円程度と推定されます。ビジネスホテルは有期契約労働者を大量採用する傾向にあり、コロナ前は給与が抑制的でした。
しかし、人手不足が深刻化した近年になって、ようやく給与の底上げが進んでいます。これは、リーズナブルな価格帯でサービスを提供するビジネスホテルにおいても、人材確保が喫緊の課題となっていることの現れです。
ビジネスホテルの働き方については、以下の記事も参考になるでしょう。ホテル業界の働き方を徹底解説:タイプ別に異なるキャリアパスと魅力
レストラン・料飲部門
ホテル内外のレストラン部門の採用給与は、企業によって提示条件の差が大きく、ボラティリティ(変動幅)の大きさが特徴です。景気や観光客数の影響を受けやすい職種であり、コロナ禍では大きく落ち込みました。しかし、需要回復期には高給オファーも散見されるようになっています。
特に、高単価なレストランや、インバウンド需要の回復で活況を呈するホテル内のレストランでは、経験豊富なシェフやサービススタッフに対して、高い給与が提示されるケースが増加しています。
結婚式場・宴会部門
ブライダル施設では、コロナ禍の結婚式延期・縮小の影響から一時求人が減少しました。しかし、2022年以降は需要持ち直しに伴い採用も活発化しています。給与水準は中堅クラスのホテルと同程度で推移しており、専門職人材にはそれなりの好待遇が提示されるケースもあります。
宴会部門も同様に、イベント需要の回復とともに人材ニーズが高まっており、特に大規模な宴会を扱うホテルでは、経験者に対する待遇が改善される傾向にあります。
ラグジュアリーホテル
シティホテルやリゾートホテルの中でも、特に「ラグジュアリーホテル」と呼ばれるカテゴリーでは、給与水準が比較的高く設定される傾向にあります。提供するサービスの質が高く、高い専門性とホスピタリティが求められるため、それに見合った待遇が用意されることが多いです。
例えば、日本経済新聞の報道によると、英国のIHGホテルズ&リゾーツは2028年に長野県の軽井沢エリアで最高級ブランド「リージェント」のホテルを開業する予定です。建築家の隈研吾氏が設計を手がけ、全58室のヴィラを含むこの種のホテルでは、質の高いサービスを提供できる人材確保が不可欠であり、高待遇が期待できるでしょう。
参照元:英IHG、軽井沢で最高級ブランドホテルを28年開業 隈研吾氏設計 – 日本経済新聞
このように、ホテル業界全体の給与水準が上昇傾向にある中で、特にラグジュアリーホテルや需要が回復している部門では、さらなる高待遇が期待できる状況です。
ホテル業界の給料や福利厚生については、こちらの記事も参考にしてください。ホテル業界の給料は低いって本当?:福利厚生で賢く働くための完全ガイド
待遇改善の背景にある「ホワイト化」の兆候
給与水準の向上だけでなく、ホテル業界全体で「ホワイト化」の兆候が見られることも、求職者にとっては注目すべき点です。人手不足が深刻化する中で、企業は単に給与を上げるだけでなく、従業員が長く安心して働ける環境を整備することに注力しています。
ホテル業界におけるホワイト企業の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- 給料の水準が業界平均よりも高い:前述の通り、コロナ禍からの回復期で給与水準が上昇傾向にあります。
- 残業が少ない:サービス残業の禁止や労働基準法の遵守を徹底し、従業員のワークライフバランスを重視する企業が増えています。
- 福利厚生が充実している:介護・育児休暇、配偶者出産休暇、自社ホテルやグループ施設の割引サービス、資格取得支援、階層別研修、交通費支給、フレックスタイムや短時間勤務制度など、従業員の生活の質や働きやすさを高める福利厚生が充実しています。
- 経営の安定性:長期的に安心して働ける基盤があることは、ホワイト企業を見極める上で重要です。
これらの特徴を持つ企業は、従業員のモチベーション向上や離職率の低下に繋がり、結果としてより質の高いサービス提供を可能にします。求職者は、求人情報や企業HPだけでなく、口コミサイトなども活用し、具体的な労働条件や福利厚生を比較検討することが大切です。
働きやすい会社を見つけるためのヒントは、以下の記事でも紹介しています。理想の職場を見つけよう:ホテル業界の働きやすい会社ランキング
まとめ:今こそホテル業界へ飛び込むチャンス
2025年を迎えるにあたり、ホテル業界はコロナ禍からの劇的な回復を遂げ、給与水準の向上と働き方改革が急速に進んでいます。特に、人手不足が深刻化する中で、企業は優秀な人材を確保するため、以前にも増して魅力的な待遇を提示する傾向にあります。
「給料が低い」「激務」といった過去のイメージは払拭されつつあり、今やホテル業界は、キャリアアップや安定した働き方を求める求職者にとって、大きなチャンスが広がるフィールドとなっています。
就職・転職活動を行う際は、単に給与額だけでなく、福利厚生の充実度や残業時間、企業の安定性なども総合的に評価し、ご自身のキャリアプランに合った「ホワイト企業」を見つけることが重要です。最新の業界動向を把握し、この変革期にあるホテル業界で、ぜひあなたの理想の働き方を見つけてください。
ホテル業界での長期キャリア形成に興味がある方は、以下の記事もご参考ください。ホテル業界で長く活躍するために:長期キャリア形成を成功させる秘訣


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