はじめに
ホテル業界への就職や転職を検討している皆さんにとって、「給料はどうか」「激務ではないか」「働きやすい会社はどこか」といった待遇や労働環境に関する疑問は尽きないでしょう。かつて「きつい」「休みが少ない」といったイメージが先行することもあったホテル業界ですが、2025年現在、その働き方は大きく変革期を迎えています。特に、コロナ禍を経てインバウンド需要が回復し、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進が加速する中で、従業員の働きがいや健康を重視する「ホワイト企業」の動きが顕著になっています。
本記事では、ホテル業界の最新の働き方改革の動向に焦点を当て、特に「リソルホテルズが導入したオンライン診療サービス『HOTEL de DOCTOR24』」という具体的なファクトを通じて、従業員の健康と働きがいへの投資がいかに進んでいるかを深掘りしていきます。求職者が「働きやすいホテル」を見極めるための新たな視点を提供できれば幸いです。
ホテル業界の「きつい」イメージは過去のもの?最新の働き方改革動向
ホテル業界は、24時間365日稼働する特性上、シフト制勤務や夜勤が避けられない職種が多く、これまで「勤務時間が長く、休日が少ない」「給料が業界平均より低い」といった課題が指摘されてきました。実際、マイナビ転職の2024年版モデル年収平均ランキングでは、宿泊業界の平均年収は440万円と全業種の中でも低い傾向にあり、厚生労働省の2024年賃金構造基本統計調査でも、ホテル業界を含む宿泊業・飲食サービス業の平均年収は約361万円と、日本全体の平均年収約460万円と比較して低い水準です。このような状況が、高い離職率の一因とも言われてきました。
しかし、近年、特にコロナ禍を経てインバウンド需要がV字回復し、人手不足が深刻化する中で、多くのホテルが従業員の定着と働きがい向上に本腰を入れ始めています。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進はその最たる例で、AIを活用した予約システムやチェックイン・チェックアウトの自動化、清掃ロボットの導入などが進み、従業員の業務負担軽減や生産性向上に寄与しています。これにより、従業員はよりお客様との対話や、ホスピタリティの本質的な部分に集中できるようになり、仕事の質と満足度の向上が期待されています。
こうした働き方改革の動きは、単に業務効率化に留まらず、従業員の健康やウェルビーイング(心身の健康と幸福)への投資としても注目されています。表面的な福利厚生だけでなく、従業員が安心して長く働ける環境を整備することが、結果として顧客満足度を高め、企業の競争力向上に繋がるという認識が広まっているのです。
注目事例:リソルホテルズが導入したオンライン診療サービス「HOTEL de DOCTOR24」
ホテル業界の働き方改革の具体的な事例として、今回はリソルホテルズが導入した訪日外国人向けオンライン診療サービス「HOTEL de DOCTOR24」に焦点を当てて深掘りします。この取り組みは、単なる顧客サービスに留まらず、従業員の働きがいや健康に間接的に大きな影響を与える可能性を秘めています。
このサービスは、エムスリーキャリア株式会社が提供するもので、ホテル滞在中の体調不良やケガが生じた際に、スマートフォンやタブレット端末を通じて医師によるオンライン診療を受けられるというものです。英語・中国語・韓国語・タイ語・ベトナム語・インドネシア語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ポルトガル語・ロシア語に対応しており、特に多言語対応が求められるインバウンド需要の回復期において、顧客にとって非常に安心感の高いサービスと言えるでしょう。
参照:【リソルホテルズ】訪日外国人向けオンライン診療サービス「HOTEL de DOCTOR24」を全国20ホテルで導入 | リソル株式会社のプレスリリース
導入の背景と顧客へのメリット
2025年現在、日本の観光業界はコロナ禍からの劇的な回復を遂げ、訪日外国人観光客数はコロナ禍前の水準を上回る勢いで増加しています。このような状況下で、ホテル側は多様な国籍のお客様への対応力が求められますが、特に医療に関するサポートは言語や文化の壁があり、大きな課題となりがちです。
「HOTEL de DOCTOR24」の導入は、こうした課題への具体的なソリューションとなります。
- 安心感の提供:異国の地で体調を崩した際、母国語で医師の診察を受けられることは、お客様にとって計り知れない安心感を与えます。
- 迅速な対応:病院への移動や待ち時間のストレスなく、ホテル内で速やかに医療アドバイスを受けられるため、お客様の滞在体験の質が向上します。
- ホテルのブランド価値向上:お客様の健康と安全を最優先する姿勢は、ホテルのホスピタリティ精神を際立たせ、ブランドイメージの向上に繋がります。
「HOTEL de DOCTOR24」が従業員にもたらす間接的なメリット
このサービスは一見すると顧客向けのサービスですが、実はホテルで働く従業員、特に現場のスタッフにとって、間接的に非常に大きなメリットをもたらします。
1. フロントスタッフの業務負担軽減
お客様が体調不良を訴えた際、フロントスタッフは病院の手配や通訳、緊急時の対応など、多岐にわたるサポートを求められることがあります。特に外国語での医療機関との連携は、専門知識と語学力が求められ、大きな精神的・時間的負担となります。
「HOTEL de DOCTOR24」があれば、お客様自身がオンラインで医師の診察を受けられるため、スタッフの介在を最小限に抑えることが可能です。これにより、緊急対応に追われることが減り、本来の接客業務や他の業務に集中できるようになります。結果として、従業員のストレス軽減と業務効率の向上に繋がるのです。
2. 外国人スタッフの安心感向上
ホテル業界では、多様な国籍のスタッフが活躍しています。彼らにとって、自国の言葉で医療サービスを受けられる環境がホテルに整備されていることは、自身の体調不良時にも安心して相談できるという大きなメリットになります。同僚やお客様が利用する姿を見ることで、いざという時の不安が軽減され、より安心して職務に集中できるようになります。これは、外国人材の定着率向上にも寄与するでしょう。
3. ホテル全体のホスピタリティ向上と働きがい
従業員が「お客様を適切にサポートできる体制が整っている」と認識することで、自信を持ってサービスを提供できるようになります。お客様の困りごとを解決できることは、スタッフ自身の働きがいにも直結します。また、このような先進的なサービスを導入しているホテルは、従業員への投資にも積極的であると見なされ、「働きやすいホワイト企業」としての魅力が高まります。
「HOTEL de DOCTOR24」が示す、従業員の健康と働きがいへの投資
リソルホテルズの「HOTEL de DOCTOR24」導入は、単なる顧客サービス強化に留まらず、ホテル業界が従業員の健康と働きがいに対してどのように投資しているかを示す好例です。これは、現代のホテル業界が目指すべき「健康経営」の一環とも言えるでしょう。
従業員の健康は、企業の生産性や創造性を高める上で不可欠な要素です。お客様へのオンライン診療サービスを通じて、間接的に従業員の業務負担を軽減し、精神的な安心感を提供することは、従業員が心身ともに健康な状態で働ける環境を整備することに繋がります。このような取り組みは、従業員のエンゲージメント(企業への貢献意欲)を高め、結果として離職率の低下や採用競争力の強化にも寄与します。
ホテル業界で就職・転職を考える際には、給与水準や休日数といった直接的な待遇だけでなく、「従業員の健康や働きがいをサポートするための具体的な制度や取り組みがあるか」という視点を持つことが非常に重要です。DX推進による業務効率化はもちろんのこと、従業員が安心して働けるようなサポート体制が整っているかどうかが、その企業が「ホワイト企業」であるかどうかの重要な指標となります。
より具体的なホワイト企業の見分け方については、こちらの記事も参考にしてください。
ホテル業界は働きやすい?給料は?:ホワイト企業の見つけ方と離職率の真実
ホワイト企業を見極める視点:表面的な福利厚生だけでなく「従業員への投資」を見よう
ホテル業界で「働きやすい」企業、いわゆるホワイト企業を見つけるためには、単に「ボーナスが多い」「年間休日が多い」といった表面的な福利厚生だけでなく、「従業員の成長や健康、働きがいに対して、企業がどのような投資をしているか」という視点を持つことが不可欠です。
例えば、リソルホテルズの事例のように、お客様向けのサービスであっても、それが結果的に従業員の業務負担を軽減し、精神的な安心感に繋がるものであれば、それは立派な「従業員への投資」と言えます。DXによる業務効率化、多言語対応の支援、従業員のスキルアップ研修、メンタルヘルスサポートなど、様々な形で従業員への投資は行われています。
求職者の皆さんは、企業の採用情報やIR情報、ニュースリリースなどを丹念にチェックし、以下のような点を深掘りしてみてください。
- DX推進の具体的な内容:どのような技術を導入し、それが従業員の業務にどのような影響を与えているか。
- 研修制度:従業員のスキルアップやキャリア形成を支援する制度があるか。
- 健康経営への取り組み:従業員の健康をサポートするための具体的な施策があるか。
- 多様な働き方への対応:時短勤務、リモートワーク(一部職種)、副業支援など、柔軟な働き方を許容する文化があるか。
これらの情報は、その企業が従業員を「単なる労働力」ではなく、「大切な財産」として捉えているかどうかの判断材料となります。
働きがいについてさらに深く知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
ホテル業界の働きがい2025:未来を拓く就職・転職の極意とキャリアパス
まとめ
2025年現在、ホテル業界は大きな変革期を迎えており、かつての「きつい」イメージを払拭し、「働きやすい」業界へと進化を遂げようとしています。インバウンド需要の回復とDX推進は、業務効率化だけでなく、従業員の健康や働きがいへの投資を加速させています。
リソルホテルズの「HOTEL de DOCTOR24」導入事例は、お客様向けのサービスが間接的に従業員の業務負担を軽減し、安心感を提供する「従業員への投資」となり得ることを示しています。ホテル業界への就職・転職を検討する際は、給与や福利厚生だけでなく、企業が従業員の健康や成長、働きがいに対してどのような具体的な取り組みを行っているかという視点を持つことが、後悔のない企業選びに繋がるでしょう。
ホテル業界は、ホスピタリティという人間ならではの価値を提供する魅力的な業界です。最新の動向を理解し、自身のキャリアプランに合った「ホワイト企業」を見つけることで、充実したホテルライフを送ることができるはずです。


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